どの数学者もフォン・ノイマンのきわめて鋭い頭の切れを示す話をそれぞれにもっているが、ここではその一つを紹介しよう。パーティに出席したフォン・ノイマンにホステスが厚かましくも問題を出したことがある。二本の列車が同じ線路を向い合って時速30マイルで走っており、しばらくしたら衝突する運命にある。いま列車はちょうど1マイル離れている。このとき一方の列車の最前部に止まっていたずいぶんすばしこいハエが時速60マイルでもう一方の列車に向かって飛び立つ。ハエはもう一方の列車に到着するとただちに向きを変え同じ速度で元の列車に戻る。衝突の瞬間までこれを繰り返すと、ハエは何マイルを飛ぶことになるか。
ほとんどの読者、特に多少でも数学が好きな読者は、それぞれの飛行でハエが移動する距離を求め、それを合計することでこの問題を解こうとするだろう。この方法は難しいわけではないが、厄介で時間のかかる無限級数の和を計算することになる。おそらくどの読者も紙と鉛筆を使って取り組むしかないだろう。しかしもっと簡単な方法も存在する。二本の列車が衝突するまでの時間を先に計算するのである。時速30マイルで進んでいて半マイル進んだところで衝突するのだから衝突は1分後に起こる。次にこの時間にハエが進む距離を求める。時速60マイルで進むハエはこの1分の間に1マイル進む。実に簡単である。ホステスが問題の説明を終えるのとほぼ同時にフォン・ノイマンは「1マイル」と答えた。
「あまりに速いから驚いたわ。ほとんどの数学者はこの問題のトリックに気づかないで無限級数を使うの。だから数分かかるのよ」
「どんなトリックだい?僕は無限級数を使って解いたんだが」
『My Brain is Open ―20世紀数学界の異才ポール・エルデシュ放浪記―』(Bruce Schechter[著] グラベルロード[訳] 共立出版株式会社)p154〜155より引用
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